株式等の短期的な売買で利益を上げたい場合に必須となる、テクニカル分析の用語を解説します。
基礎用語
テクニカル分析とは
株式・為替・商品等の取引市場において、過去の値動きをチャートで表し、トレンドやパターンなどを分析、今後の価格や為替の動向を予想する手法。ファンダメンタル分析と相対する概念で、短期的な売買で利益を上げたい場合に活用されます。チャート分析とも呼ばれます。
チャート
株価や為替等の値動きを時間や、日、週、月毎にグラフ化し、価格の推移を見やすくまとめたもの。
ローソク足
株価等の値動きを表すチャートの一種。1日や1週間など一定の時間を区切った時、その期間内の始値、高値、安値、終値という四本値を形で表したものです。ローソク足は日本発祥で、江戸時代に出雲国の米商人本間宗久が発案し、大阪・堂島の米取引で使われたとされています。
陽線
ローソク足チャートにおいて、終値が始値より高かったとき(価格が上昇した時)、白い帯(始値と終値の差額分を白地にした四角形)で当該期間の上昇幅を表したもの。
陰線
ローソク足チャートにおいて、終値が始値より 安かったとき(価格が下落した時)、黒い帯(始値と終値の差額分を黒地にした四角形)で当該期間の下落幅を表したもの。
上ヒゲ
陽線/陰線の上に伸びる線で、ローソク足が表す期間内に到達した最高値を表します。
下ヒゲ
陽線/陰線の下に伸びる線で、ローソク足が表す期間内に到達した最安値を表します。
月足、週足、日足、8h足…
1つのローソク足が1ヶ月間を表すローソク足チャートを月足、1週間であれば週足、といった具合に、ローソク足チャートでは期間+足でスパンを表します。
インジケーター
チャートでテクニカル分析を行うための指標。トレンド系、オシレーター系に分類されます。
トレンド系
相場の全体的な流れを見るために用いられるインジケーター。
オシレーター系
買われすぎ、売られすぎという直近の状況を判断するために用いられるインジケーター。
トレンド系インジケーター・分析手法
移動平均線
ある一定期間の終値から平均値を算出し、その平均値の動きを折れ線グラフで表したもの。過去5日間の平均値の動きを繋いだものを5日移動平均線、過去25日間の平均値なら25日移動平均線といった具合に、平均値の算出期間を頭に付けて表します。
ローソク足チャートと合わせて使用されることが一般的で、以下のように組み合わされることが多いです。
- 日足チャート…5日、25日、75日移動平均線
- 週足チャート…13週、26週移動平均線
- 月足チャート…12ヶ月、24ヶ月移動平均線
SMA(Simple Moving Average):単純移動平均線
対象期間中の価格の終値の平均を用いた移動平均線で、最も一般的に使われています。
WMA(Weighted moving average):加重移動平均線
最新の価格に重きを置いており、過去の価格ほど比重が小さくなるように算出した平均値を用いた移動平均線。価格の変化に対する反応はSMAより早く追従性も高いです。
EMA(Exponentially Smoothed moving Average):指数平滑移動平均線
平滑化係数を利用し、最新の価格の比重を大きく、過去の価格の比重を小さくして算出した平均値を用いた移動平均線。価格の変化に対する反応はSMA、WMAより早いです。
移動平均乖離率
株価と移動平均線の差を百分率で表したもの。以下の式で算出されます。
移動平均乖離率(%) = ( 株価 - 移動平均 ) / 移動平均 × 100
「急騰・急落後は移動平均線に戻る」という考え方に基づき、売られ過ぎ・買われ過ぎを読み取って逆張りで利益をあげるために活用されます。
抵抗線・支持線(レジスタンスライン・サポートライン)
チャート上にある2つ以上の高値を結んだ線を抵抗線(レジスタンスライン)、2つ以上の安値を結んだ線を支持線(サポートライン)といいます。投資家心理を反映し、価格上昇局面では抵抗線で上値が抑制、下落局面では支持線で反転することが多いため、売買判断の材料となります。また、支持線では買い、抵抗線では売りが集まっていると考えられます。
GC(Golden Cross):ゴールデンクロス
中期の移動平均線が、長期の移動平均線を下から上に交差すること。低迷していた価格が上昇局面に入ることを示す場合が多く、買いのサインとなります。交差する線が双方上向きの場合、交差の確度が大きい場合はより信頼度が高くなります。
短期の平均線が中期の平均線を下から上に交差することをミニゴールデンクロスと呼びます。
DC(Dead Cross):デッドクロス
中期の移動平均線が、長期の移動平均線を上から下に交差すること。価格が下降局面に入ることを示す場合が多く、売りのサインとなります。交差する線が双方下向きの場合、交差の確度が大きい場合はより信頼度が高くなります。
短期の平均線が中期の平均線を上から下に交差することをミニデッドクロスと呼びます。
ボリンジャーバンド
アメリカの作家で財務アナリストのジョン・ボリンジャー氏が考案したインジケーターで、移動平均線を中心として、その上下には標準偏差を表示します。トレンドの強弱を分析するために用いられます。
一目均衡表(いちもくきんこうひょう)
昭和初期に細田悟一氏によって作成された日本発のテクニカル分析手法。他のテクニカル分析とは異なり、価格そのものではなく、トレンドの周期性に着目して作られています。
一目均衡表は以下の5本の線で構成されています。
- 基準線 過去26日間の高値と安値の平均値
- 転換線 過去9日間の高値と安値の平均値
- 遅行スパン 当日の終値を26日前に記入したもの
- 先行スパン1 基準線と転換線の平均値を26日先に記入したもの
- 先行スパン2 52日間の高値と安値の平均値を26日先に記入したもの
雲
先行スパン1と先行スパン2の差を雲と呼び、雲が厚いほど強い抵抗線・支持線になるとされます。
三役好転
以下の3つの条件が揃うことを三役好転と呼び、強い買いシグナルとされます。
- 転換線が基準線を上抜ける
- 遅行スパンがローソク足の上にある
- ローソク足が雲の上にある
三役逆転
以下の3つの条件が揃うことを三役逆転と呼び、強い売りシグナルとされます。
- 転換線が基準線を下抜ける
- 遅行スパンがローソク足の下にある
- ローソク足が雲の下にある
一目均衡表におけるゴールデンクロス・デッドクロス
一目均衡表では、転換線とローソク足の交差をゴールデンクロス・デッドクロスと呼び、転換線がローソク足を上抜けると買いのサイン(ゴールデンクロス)、下抜けると売りのサイン(デッドクロス)となります。
DMI(Directional Movement Index):方向性指数
J.W.ワイルダー氏が考案した、価格のトレンドの強弱を数値で示すインジケーター。+DIと-DI、ADX(Average Directional Movement Index)という3本のラインで構成されています。+DIは上昇力、-DIは下降力、ADXはトレンドの強さを示します。
売買サインは以下の通りです。
- +DIが-DIを上抜けるときは、買いサイン
- +DIが-DIを下抜けるときは、売りサイン
- ADXが上昇しているときは、トレンドが強い
- ADXが下降しているときは、トレンドが弱い
パラボリック
J.W.ワイルダー氏が考案したトレンド系インジケーター。SAR(Stop And Reverse Point)と呼ばれる放物線をチャートに記入します。SARがローソク足の下にある場合は上昇相場、上にある場合は下落相場と判断されます。
SARは以下の式で算出されます。
SAR = 前日のSAR + AF × ( EP - 前日のSAR )
- AF(Acceleration Factor):加速因子( 0.02 ≦ AF ≦ 0.20 )。初期値 0.02、終値の高値更新毎に+0.02。
- EP(Extreme Price):極大値。前日までの最高値・最安値。
- 上昇トレンド初期値は 前回下降トレンドの最安値。
- 下降トレンド初期値は 前回上昇トレンドの最高値。
売買シグナルは以下の通りです。
- 買いシグナル ローソク足上側のSARとローソク足が交差したとき
- 売りシグナル ローソク足下側のSARとローソク足が交差したとき
下半身・逆下半身
下半身は、5日移動平均線が横ばいか上向きに転じた時、陽線が5日移動平均線を上に半分以上飛び出ている状態を指し、買いのサインとなります。
一方、逆下半身は、5日移動平均線が横ばいか下向きに転じた時、陰線が5日移動平均線を下に半分以上飛び出ている状態を指し、売りのサインとなります。
オシレーター系インジケーター・分析手法
MACD(Moving Average Convergence and Divergence):マックディー/移動平均収束拡散法
アメリカの投資顧問会社の経営者ジェラルド・アペル氏が考案したインジケーターで、短期EMAと長期EMAの位置関係から売買タイミングを判断します。MACDでは売買タイミングを判定するために、MACD自体をさらに指数平滑化移動平均にしたSignalと言うものも使います。
- MACD = 短期EMA - 長期EMA
- Signal = MACDの指数平滑化移動平均
上記の式で算出したMACDとSIGNALのゴールデンクロス、デッドクロスが売買のサインとなります。MACDの方がSIGNALより早く動くため、MACDがSIGNALを下から上に交差した時が買い、その逆が売りサインとなります。
また、MACDのチャートには、以下の式で算出したMACD2(MACDヒストグラム、MACDオシレーターとも呼ばれます)が棒グラフで表示されますが、この値がゼロになるポイント(MACDとSignalの交差点)が売買タイミングです。
- MACD2 = MACD - Signal
ストキャスティクス
アメリカのチャート分析家ジョージ・レーンが1950年代に考案したインジケーター。買われ過ぎ、売られ過ぎを判断するオシレーター系指標の一種で、逆張りの投資手法でよく用いられます。
具体的には、過去一定期間における最高値を100%、最安値を0%としたとき、80%以上を買われ過ぎ、20%以下を売られ過ぎとして、当日の終値がどの位置にあるのか評価します。 ストキャスティクスの分析は、ファーストとスローの2種類があります。
ファーストストキャスティクス
%K(パーセントK)、%D(パーセントD)の2本のラインを使って売買判断を行います。それぞれ以下の式で算出します。
- %K = ( 当日終値 ー 過去N日間の安値 ) / ( 過去N日間の高値 ー 過去N日間の安値 ) × 100
- %D = ( 当日終値 ー 過去N日間の安値 ) の3日間の合計 / ( 過去N日間の高値 ー 過去N日間の安値 ) の3日間の合計
N=一般的には9日が用いられます。
%Kは、当日の終値が過去N日間で最高値だった場合は100%に、過去N日間で最安値だった場合は0%になります。
%Dは、%Kの分母と分子それぞれ3日分を合計した値で算出します。
当日の終値が過去N日間の中で、どの位置にあるのかを数値化したものが%K、%Kの分子・分母それぞれ3日分で平準化したものが%Dとなるため、%Dの方が突発的な価格変動の影響を受けにくく、ダマシが少なくなります。
売買シグナルは以下の通りです。
- 買いシグナル …20%以下の売られ過ぎゾーンで、%Kが%Dを上抜くゴールデンクロス
- 売りシグナル …80%以上の買われ過ぎゾーンで、%Kが%Dを下抜くデッドクロス
スローストキャスティクス
%D(パーセントD)、スロー%Dの2本のラインを使って売買判断を行います。スロー%Dは以下の式で算出します。
- スロー%D = 直近3日間の%Dの合計 / 3
N=一般的には9日が用いられます。
スロー%Dは、%Dの3日移動平均になります。
スロー%Dは、%Dの移動平均であり、%Dより遅れて動く(遅行する)ことになります。
売買シグナルは以下の通りです。
- 買いシグナル …20%以下の売られ過ぎゾーンで、%Dがスロー%Dを上抜くゴールデンクロス
- 売りシグナル …80%以上の買われ過ぎゾーンで、%Dがスロー%Dを下抜くデッドクロス
ファーストストキャスティクスで用いる%Kはダマシが多いため、スローストキャスティクスを使うことが一般的です。
RSI(Relative Strength Index):相対力指数
1978年にJ・W・ワイルダー氏が発表した、買われ過ぎ、売られ過ぎを判断するオシレーター系のインジケーター。株価が方向感のない横ばいの動きをしている際に、特に力を発揮します。RSIは、直近の一定期間において終値ベースで上昇変動と下落変動のどちらの勢いが強いのか計測しようとする指標です。
テクニカル理論
グランビルの法則
アメリカの金融記者でチャート分析家のジョゼフ・E・グランビル氏が考案した、移動平均線を利用したチャート分析理論。価格と移動平均線に着目し、乖離や方向性を見ることで先行きを予測するものです。
移動平均線の向き及び価格との乖離を見ることで売買タイミングを判断する方法で、以下の8つのタイミングが示されています。
- 移動平均線が下落後、横ばいまたは上向きに転じた時に、価格が移動平均線を下から上に突き抜けた場合。
- 移動平均線が上向きの時に、価格が一旦下落して移動平均線を下回るも、再度上昇して移動平均線を下から上に突き抜けた場合。
- 移動平均線が上向きの時に、価格が移動平均線の手前まで一旦下落するも、移動平均線を下抜けることなく価格が再度上昇する場合。
- 移動平均線が下向きの時に、価格が移動平均線から大きく乖離して下落した場合。
- 移動平均線が上昇後、横ばいまたは下向きに転じた時に、価格が移動平均線を上から下に突き抜けた場合。
- 移動平均線が下向きの時に、価格が一旦下落し、再度上昇して移動平均線を下から上に突き抜けた場合。
- 移動平均線が下向きの時に、価格が一旦上昇するも、移動平均線の手前で止まり、再度下落した場合。
- 移動平均線が上向きの時に、価格が移動平均線から大きく乖離して上昇した場合。
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