ベクトル検索とは?生成AIで重要となる検索手法を解説

ChatGPTをはじめとする生成AIにとって重要な技術の一つに「ベクトル検索」があります。ユーザの意図に沿った出力を生成するために欠かせない、ベクトル検索とその関連技術を解説します。

目次

ベクトル検索とは?

「ベクトル検索」を理解するためには、まず「ベクトル」と「ベクトル空間モデル」という概念を理解する必要があります。

ベクトルとは?

ベクトル(Vector)とは、数学や物理学で使用される重要な概念で、「大きさ」と「向き」を持つ量です。

ベクトルは矢印で図示されます。矢印の始点はベクトルの出発点を表し、終点はベクトルの向きと大きさを示します。一般的に、ベクトルは以下の要素で構成されます。

  1. 大きさ(Magnitude)
    ベクトルの大きさは、矢印の始点から終点までの距離で表します。ベクトルの大きさは非負の実数で表されます。
  2. 向き(Direction)
    ベクトルの方向は、矢印が向かっている方向で表します。方向は一般的に角度や直交座標系の軸によって表されます。

ベクトルは、運動や力学、幾何学、機械学習、データ解析などの分野において、速度、加速度、力、特徴量など、量的な情報を表現するために用いられます。

大きさだけで向きを持たない量は「スカラー」といいます。

ベクトル空間モデルとは?

ベクトル空間モデル(Vector Space Model)はテキストデータ(文書)の集合体の表現手法の一つで、情報検索や自然言語処理の分野で使用されます。

このモデルでは、各種文書をベクトルとして表現します。具体的には、文書内の単語や単語の出現頻度を要素とするベクトルを作成します。

文書集合を表すため、TF-IDF(Term Frequency-Inverse Document Frequency)と呼ばれる手法が用いられています。
TF-IDFでは、文書内の単語の出現頻度(TF)と、文書集合全体における単語の希少性(IDF)を考慮して、単語の重要度を算出します。

各種文書をベクトルとして表現することで、文書間の類似度や関連性を計算することが可能となります。

一般的な類似度計算手法としては、コサイン類似度が使われます。
コサイン類似度は、2つのベクトルのなす角の余弦を計算することで類似度を求めます。

ベクトル検索とは?

文書間の類似度・関連性が計算できると、高度な情報検索が可能となります。

ユーザが入力した検索クエリをベクトル表現に変換することで、ベクトル空間に存在する文書のベクトル表現との類似度を算出、類似度が高い文書を特定することが可能となる訳です。

この検索手法をベクトル検索(Vector Search)と呼びます。従来のキーワード検索(単語が一致する文書を検索する手法)と異なり、キーワードを含んでいなくても関連性の高い文書を検索することが可能となっています。

ベクトル検索の流れ

ベクトル検索の手順を詳しく見てみましょう。

まずは、検索対象データの準備が必要です。

  1. 検索対象データのベクトル表現
    検索対象となるデータ(例えば文章や画像)をベクトル表現に変換します。これは、データの特徴を抽出し、数値化するプロセスです。文章の場合は、単語や文の出現頻度を元にベクトルを作成することが一般的です。
  2. ベクトルデータベースへの格納
    ベクトル表現に変換した検索対象データをベクトルデータベースに格納します。

ベクトルデータベース(Vector Database)とは、ベクトルデータ(特徴ベクトル)を格納、管理、検索するために設計されたデータベースです。

続いて、実際の検索手順を見ていきましょう。

  1. クエリのベクトル化
    検索クエリ(例えばキーワードや画像)も同様にベクトル表現に変換(ベクトル埋め込み)します。
  2. ベクトル間の距離計算
    クエリと検索対象データとのベクトル間の距離を計算します。一般的には、ユークリッド距離やコサイン類似度などが使用されます。距離が小さいほど類似度が高いと見なされます。
  3. 類似データのランキング
    計算した距離や類似度を基に、クエリに最も近いベクトル(つまり関連性が高いデータ)を順位付けします。これにより、類似したデータを優先して検索結果として表示することができます。

以上が、ベクトル検索の流れです。

テキストのベクトル表現

つづいて、テキストのベクトル表現、すなわち単語や文書を数値のベクトルで表現する手法を詳しく見てみましょう。

以下に代表的なテキストのベクトル表現手法を紹介します。

  1. One-hotベクトル
    One-hotベクトルは、単語をベクトルで表現する最も基本的な手法です。単語の辞書において、対応する単語のインデックス位置に1を持ち、その他の要素は0で埋められたベクトルです。例えば、辞書が[“apple”, “banana”, “orange”]の場合、”apple”は[1, 0, 0]、”banana”は[0, 1, 0]、”orange”は[0, 0, 1]となります。
  2. 分散表現(ワードベクトル)
    分散表現は、単語を密なベクトル空間に埋め込む手法で、単語の意味や関連性を反映します。代表的な手法にはWord2VecGloVeがあります。これらの手法は、単語の周囲の文脈や共起情報を考慮してベクトルを学習します。例えば、”king”と”queen”のベクトル表現は、意味的に近い位置に配置されます。
  3. Transformerモデルによるエンコーディング
    最近の自然言語処理では、Transformerモデルを用いたエンコーダーを使用して文や文書のベクトル表現を生成する手法が一般的です。Transformerモデルは、Self-Attentionメカニズムを利用して文脈を捉えるため、より豊かな表現を得ることができます。

これらは一部の例ですが、言葉のベクトル表現は自然言語処理の様々なタスクに応用されています。ベクトル表現を用いることで、単語や文書の意味や関連性を計算したり、機械学習モデルの入力として利用したりすることが可能となります。

ベクトル埋め込みとは?

テキストデータ(単語、文章)を数値ベクトルの形式に変換しベクトル空間に埋め込むことを、ベクトル埋め込み(Vector Embedding)といいます。

ベクトル埋め込みは、単語や文章の意味的な表現を捉えるために使用されます。一般的には、単語や文章の特徴を抽出し、それを低次元の密なベクトル表現に変換します。このような密な表現は、単語や文章の類似性や関連性を計算するために利用されます。

ベクトル埋め込みは、事前学習された言語モデルや統計的手法に基づいて生成されます。代表的な手法としては、ワードエンベッディング(Word Embedding)やフレーズエンベッディング(Phrase Embedding)、センテンスエンベッディング(Sentence Embedding)などがあります。

具体的な手法としては、Word2Vec、GloVe、FastTextなどが挙げられます。これらの手法は、大規模なテキストコーパスから単語の共起関係や文脈情報を学習し、単語を意味的に密なベクトル空間に埋め込みます。埋め込み空間では、類似した意味を持つ単語は近くに配置されます。

コーパス(corpus)とは、自然言語の文章や会話の内容などを大量に収集、構造化して、コンピュータで検索できるようにしたデータベースです。

ベクトル埋め込みは、自然言語処理のさまざまなタスクで広く使用されています。単語の類似性や文書分類、情感分析、機械翻訳などのタスクにおいて、ベクトル埋め込みは特徴表現として有用です。また、埋め込みベクトルは機械学習モデルの入力として使用され、タスクの精度向上に寄与します。

共起情報とは?

共起情報(Co-occurrence Information)は、テキストやコーパス中で単語や語句が一緒に現れる頻度や関係性を表す情報です。共起情報は、自然言語処理や情報検索の分野で広く利用されています。

共起情報は、単語や語句が一緒に現れる回数や頻度を数えることで得られます。通常、テキストデータや大規模なコーパスを解析し、文脈内での単語の共起関係を把握するために使用されます。

共起情報を利用することで、単語間の意味的な関係や類似性を推定することができます。共起する頻度が高い単語同士は、意味的に関連がある可能性が高いと考えられます。たとえば、「車」という単語が「運転」という単語と頻繁に共起する場合、それらは交通や自動車に関連する単語として関連があると推測できます。

共起情報は、単語の分散表現(ワードベクトル)の学習にも利用されます。Word2VecやGloVeなどの手法は、単語の共起情報を考慮して密なベクトル表現を学習します。これにより、意味的に類似した単語がベクトル空間上で近い位置に配置されることがあります。

共起情報は、自然言語処理のタスクにおいて単語の意味や関連性を推定するための重要な手がかりとなります。

Word2Vec

Word2Vecは、単語の分散表現(distributed representation)を学習するための手法の一つです。この手法は、単語の意味や関連性を捉えるために広く利用されています。

Word2Vecは、ニューラルネットワークベースのモデルであり、大規模なテキストコーパスから学習データを収集し、単語のベクトル表現を学習します。主なアイデアは、「共起する単語は意味的に関連している」という仮定に基づいています。つまり、文脈内で一緒に現れる単語同士は、意味的に類似した関係を持つと考えられます。

Word2Vecには、2つの学習アルゴリズムがあります:

  1. CBOW(Continuous Bag-of-Words)
    CBOWモデルは、文脈(周囲の単語)を入力として、中央の単語を予測するモデルです。つまり、周囲の単語から中央の単語を予測するタスクを学習します。CBOWモデルは、文脈内の複数の単語から中央の単語を推定するため、文脈全体の情報を利用することができます。
  2. Skip-gram
    Skip-gramモデルは、中央の単語を入力として、周囲の単語を予測するモデルです。つまり、中央の単語から周囲の単語を予測するタスクを学習します。Skip-gramモデルは、中央の単語を複数の文脈で予測するため、単語の意味的な関係をより広範に捉えることができます。

Word2Vecの学習プロセスでは、ニューラルネットワークの重みを調整して、単語の分散表現を最適化します。学習が進むと、単語はベクトル空間上の位置を持つようになります。意味的に類似した単語は、ベクトル空間上で近い位置に配置される傾向があります。

Word2Vecを使用することで、単語の分散表現を取得できます。この分散表現は、自然言語処理タスクや情報検索タスクで使用されることがあります。また、Word2Vecの学習済みモデルを利用することも一般的です。

Word2Vecの分散表現は、類似性や関連性の計算に活用されます。例えば、ベクトル空間内の距離を計算することで、単語間の意味的な類似性を推定できます。具体的には、コサイン類似度などの指標を使用して、ベクトル間の角度の近さを測ります。距離が近いほど、意味的に類似した単語と見なされます。

また、Word2Vecの分散表現は単語間の演算にも利用されます。例えば、”王様” – “男性” + “女性”の演算を行うと、”女王”という単語に近いベクトルが得られることが期待されます。これにより、意味的なアナロジー関係を表現することができます。

Word2Vecは、大規模なテキストコーパスを使用して学習されるため、一般的な言語の特徴を把握することができます。そのため、Word2Vecの学習済みモデルを利用することで、特定のタスクにおいて高い性能を発揮することがあります。学習済みモデルはオープンソースで公開されており、一般的な言語の分散表現を容易に利用できるようになっています。

ただし、Word2Vecは単語レベルのベクトル表現であり、文脈や文全体の意味を捉えることはできません。そのため、より高度な自然言語処理タスクにおいては、文や文書の分散表現を学習するためのモデル(例:Transformerモデル)が使用されることが一般的です。

GloVe

GloVe(Global Vectors for Word Representation)は、単語の分散表現(ワードベクトル)を学習するための手法です。GloVeは、Word2Vecと同様に単語の意味や関連性を捉えるために使用されますが、異なるアプローチを取っています。

GloVeの目的は、単語の意味的な関連性を捉えるだけでなく、単語間の共起確率の比率を学習することです。具体的には、GloVeは大規模なテキストコーパスから共起行列を作成し、その行列の統計的な性質をモデル化します。

GloVeの学習プロセスでは、単語間の共起情報から導かれる関数を最適化することで、単語の分散表現を獲得します。この関数は、単語間の共起確率の比率を表現するために設計されています。GloVeでは、共起行列の要素間の対数比率を学習し、単語ベクトルを更新していきます。

GloVeの利点の一つは、スケーラビリティです。GloVeは、大規模なコーパスから効率的に学習することができます。また、学習済みのGloVeモデルは一般的に公開されており、様々な自然言語処理タスクに利用することができます。

GloVeの分散表現は、類似性の計算や単語の意味的な演算に使用されます。Word2Vecと同様に、ベクトル間の距離を計算して単語の類似性を推定することができます。また、ベクトルの演算によって意味的なアナロジー関係を表現することも可能です。

ただし、GloVeは単語レベルの分散表現を学習するため、文や文書全体の意味を捉えることはできません。また、Word2Vecと比較して語義の曖昧性に対するロバスト性にやや劣るとされています。

GloVeは、自然言語処理の様々なタスクで有用な単語の分散表現を提供する手法の一つです。その性能と使いやすさから、研究者や開発者によって広く利用されています。

Transformerモデル

Transformerモデルは、自然言語処理(NLP)タスクにおいて革新的な成果を上げたニューラルネットワークアーキテクチャです。Transformerは、2017年にVaswaniらによって提案され、機械翻訳などの多くのNLPタスクで優れた性能を発揮しました。

Transformerモデルは、従来のリカレントニューラルネットワーク(RNN)ベースのモデルよりも並列処理が容易であり、長い文脈を効果的に捉えることができます。これは、Self-Attention(自己注意)メカニズムを中心に構築されています。

以下にTransformerモデルの主な構成要素と動作を説明します:

  1. エンコーダとデコーダ
    Transformerモデルは、エンコーダとデコーダの2つの主要な部分から構成されます。エンコーダは入力シーケンスをエンコードし、デコーダはエンコーダの出力を使用してターゲットシーケンスを生成します。
  2. Self-Attentionレイヤー
    エンコーダとデコーダの両方にSelf-Attentionレイヤーがあります。Self-Attentionは、各トークンが他のトークンとの関連性を計算するメカニズムです。これにより、トークン間の重要な依存関係が抽出されます。
  3. マルチヘッドAttention
    Self-Attentionレイヤーは複数のAttentionヘッドを持ち、異なる表現空間を学習します。各ヘッドのAttentionの出力は結合され、最終的な特徴表現となります。
  4. フィードフォワードネットワーク
    Self-Attentionレイヤーの後には、位置ごとの全結合層によるフィードフォワードネットワークが続きます。これは、各位置の特徴を非線形的に変換します。
  5. レジデュアルコネクションと正規化
    Transformerモデルでは、各サブレイヤー(Self-Attentionやフィードフォワードネットワーク)の前にレジデュアルコネクションと正規化層が追加されます。これにより、勾配の伝播やモデルの学習がスムーズに行われます。
  1. 位置エンコーディング
    Transformerモデルは、単語の順序情報を保持するために位置エンコーディングを使用します。位置エンコーディングは、各単語の位置情報を数値ベクトルとしてエンコードし、入力表現に組み込まれます。これにより、単語の順序が考慮され、文脈の理解が向上します。
  2. 推論と学習
    Transformerモデルでは、学習フェーズと推論フェーズでの動作が異なります。学習時には、教師ありデータを使用してモデルを訓練します。推論時には、デコーダを使用してターゲットシーケンスを生成します。デコーダは、自己回帰的に出力を生成し、生成されたトークンは次のステップの入力として使用されます。
  3. 事前学習と転移学習
    Transformerモデルは、大規模な教師ありデータセットを使用して事前学習が行われることが一般的です。具体的には、大規模なコーパスを使用して言語モデルを学習し、その後、タスク固有のデータセットで微調整(転移学習)が行われます。これにより、少ない教師ありデータでも高い性能を達成できます。
  4. モデルの拡張
    Transformerモデルは、様々な変種が提案されており、タスクやデータの特性に応じて調整されることがあります。例えば、BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)は、双方向の表現学習を可能にするためのマスクされた言語モデルです。GPT(Generative Pre-trained Transformer)は、自己回帰型の言語モデルです。

Transformerモデルは、その優れた性能と柔軟性から、自然言語処理タスクにおいて広く使用されています。さまざまなタスクにおいて、Transformerモデルは他のアーキテクチャよりも優れた結果を提供しています。そのため、自然言語処理の分野において、Transformerモデルは重要な技術となっています。

Self-Attention

Self-Attention(自己注意)メカニズムは、Transformerモデルなどのニューラルネットワークアーキテクチャで使用される重要な構成要素です。Self-Attentionは、入力シーケンス内の各要素が他の要素との関連性を計算し、重要な情報を抽出するための仕組みです。

Self-Attentionは、以下の手順で動作します:

  1. 入力シーケンスの各要素(トークン)に対して、3つの異なる変換(キー、クエリ、バリュー)を行います。これにより、キー(Key)ベクトル、クエリ(Query)ベクトル、バリュー(Value)ベクトルが得られます。これらの変換は、通常、線形変換(全結合層)によって実現されます。
  2. キー、クエリ、バリューのベクトルを使用して、各トークンの他のトークンとの関連性を計算します。具体的には、クエリとキーの類似度を計算し、ソフトマックス関数を適用して重みを正規化します。これにより、各トークンに対する重要度が得られます。
  3. 得られた重みを使用して、各トークンのバリューに重み付けを行い、重み付き平均を計算します。これにより、各トークンは他のトークンからの情報を収集します。このプロセスによって、重要な情報がより強調され、モデルが入力の文脈を理解するのに役立ちます。

Self-Attentionメカニズムは、長い文脈を持つ入力シーケンスにおいても、局所的な関連性を抽出することができます。また、各トークンは他のトークンとの関連性を直接計算するため、並列処理が可能であり、モデルの学習や推論の効率を向上させます。

Transformerモデルでは、Self-Attentionレイヤーがスタックされ、複数回のマルチヘッドAttention(複数のAttentionヘッドの並列処理)が行われます。これにより、異なる文脈や異なる側面からの情報を捉えることができます。

Self-Attentionメカニズムは、自然言語処理タスクにおいて特に強力であり、機械翻訳、文章生成、質問

ベクトルデータベースとは?

ベクトルデータベース(Vector Database)は、ベクトルデータ(特徴ベクトル)を格納、管理、検索するために設計されたデータベースのことです。

ベクトルデータベースは、ベクトル空間モデルや類似性検索などのテクニックを活用して、高速なベクトル検索や近傍探索を実行することができます。

従来のデータベースでは、主にテキストや数値データなどの構造化データを扱ってきました。しかし、画像、音声、テキストの埋め込みベクトル、センサーデータなど、非構造化のベクトルデータの需要が増えるにつれて、ベクトルデータベースの重要性が高まっています。

ベクトルデータベースは、以下のような特徴を持っています。

  1. ベクトルの格納とインデックス化
    ベクトルデータベースは、大規模なベクトルデータセットを格納するための効率的なデータ構造を提供します。ベクトルの特徴をインデックス化し、高速な検索やクエリ処理を可能にします。
  2. 高速な類似性検索と近傍探索
    ベクトルデータベースは、ベクトル間の類似度や距離を計算して、クエリに最も近いベクトルを見つけることができます。これにより、類似画像、類似商品、類似音声などの検索や推薦システムの実装が容易になります。
  3. スケーラビリティとパフォーマンス
    ベクトルデータベースは、大規模なデータセットに対しても高いスケーラビリティを持ち、高速な検索性能を提供します。並列処理や分散処理を活用して、膨大なベクトルデータを効率的に処理します。
  4. 多様なデータタイプのサポート
    ベクトルデータベースは、画像、音声、テキストなどの異なるデータタイプのベクトルをサポートします。各データタイプに最適化されたベクトル表現や検索手法を提供します。

おもなベクトルデータベース製品/サービス

いくつかの有名なベクトルデータベース製品を以下に挙げます。

  1. Elasticsearch
    Elasticsearchは、オープンソースの分散型検索エンジンであり、ベクトルデータベースとしても利用されます。Elasticsearchにはベクトル型のフィールドがあり、類似性検索や近傍探索がサポートされています。Elasticsearchは柔軟性とスケーラビリティに優れており、広く利用されています。
  2. Faiss
    Faiss(Facebook AI Similarity Search)は、Facebookが開発したベクトルデータベースライブラリです。高速な類似性検索や近傍探索が特徴であり、大規模なベクトルデータセットに対して効率的な検索を提供します。FaissはC++で実装されており、Pythonや他のプログラミング言語からも利用することができます。
  3. Milvus
    Milvusは、オープンソースのベクトルデータベースプラットフォームです。高速なベクトル検索をサポートし、大規模なベクトルデータセットに対してスケーラブルな検索を実現します。また、GPUの利用や分散環境での動作もサポートしています。
  4. Algolia
    Algoliaは、高速な検索体験を提供するためのSaaS型の検索プラットフォームです。Algoliaは、テキスト検索だけでなく、ベクトル検索もサポートしています。ベクトルフィールドを持つデータをインデックス化し、類似性検索や近傍探索を実行することができます。
  5. Azure Cognitive Search
    Azure Cognitive Searchは、Microsoft Azureのクラウドベースの検索サービスです。Azure Cognitive Searchは、ベクトルデータのインデックス化と類似性検索をサポートしています。ベクトルフィールドを含むデータをインデックス化し、高速なベクトル検索を実行することができます。
  6. Anserini
    OpenAIのAnseriniは、オープンソースの情報検索ツールキットですが、クラウド上でホステッドされるベクトルデータベースサービスも提供しています。Anseriniを使用して、ベクトルデータを効率的に格納し、類似性検索や近傍探索を実行することができます。

ベクトル検索の活用分野

ベクトル検索は、以下のようなさまざまな分野で活用されています。

  1. 情報検索
    ベクトル検索は、大規模なドキュメント集合やウェブページなどの情報を効率的に検索するために利用されます。文章やキーワードのベクトル表現を作成し、類似性を計算することで、関連する文書や情報を見つけ出すことができます。
  2. 自然言語処理
    テキストデータの解析や処理において、ベクトル検索は重要な手法です。文章や文書をベクトル化して類似性を計算することで、文書の分類やクラスタリング、情報抽出などのタスクを実行することができます。
  3. 画像検索
    画像処理においてもベクトル検索は利用されます。画像を特徴ベクトルに変換し、類似した画像を検索することができます。例えば、特定のオブジェクトや風景に似た画像を探すために使用されます。
  4. 推薦(レコメンド)システム
    ベクトル検索は推薦システムにも応用されます。ユーザーの行動データやアイテムの特徴をベクトル化し、類似度を計算することで、ユーザーに適切なアイテムを推薦することができます。

これらは一例であり、ベクトル検索は様々な分野で応用されています。特に、大量のデータや高次元の特徴空間において、効率的で精度の高い類似性検索を実現するために重要な技術です。

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この記事を書いた人

東京都在住、会社員、NFTウォッチャー・コレクター

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